■ NAVY SEAL とは?
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アメリカ最強の特殊部隊として非常に有名で、NAVY
SEALをテーマにした映画などもたくさんあるので、ほとんどの方がその存在をご存知だと思います。
SEALは、第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦で、ドイツ軍が敷設した海中の遮蔽物を撤去する為に、海軍初の特殊作戦部隊として編成されたUDT(Underwater
Demolition Team : 水中爆破部隊)が発展したものです。
1962年1月1日、当時の大統領ジョン・F・ケネディーにより、海軍にSEAL2個部隊(チーム1とチーム2)の設立が承認され、現在の名称になりました。
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SEALの名は、SEA:海、AIR:空、LAND:陸、の頭文字をつなげた物で、従来までそれぞれ専門の特殊部隊が行っていた高度な軍事作戦の全てに対応し、文字通り陸海空のあらゆる局面で任務を行うエキスパート集団です。
その後起こったベトナム戦争にも投入されたSEALですが、当時はその活動内容が不確定で、隊員の戦闘能力も未知数だった為、SEAL部隊の戦闘は、戦場での隊員各自の判断に任せられていました。
最初に派遣されたチーム1は、PBR(Patrol
Boat River :
河川哨戒艇)を用いた河川からの戦闘を行いました。
続いて投入されたチーム2に所属していたリチャード・マルシンコ少尉は、河川からの攻撃だけでは不十分と判断し、上陸してゲリラ戦を展開しました。
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この戦闘でSEALの潜在能力は高い評価を受け、後のCIAとの共同作戦においてもベトナム軍司令官暗殺や機密書類の奪取、内部スパイの排除(暗殺)など多岐の任務を遂行し大きな成果を上げました。
やがてベトナム戦争においてSEALの規模は5チームまで拡大し、追って戦場に投入されたチーム3、4、5もマルシンコの行った作戦を踏襲しました。
ベトナム戦争のマルシンコ達によるこれらの戦闘は、結果的にSEALの方向性と存在意義を決定付けました。
当時マルシンコの首には賞金がかけられたともいわれ、ベトコンにとってSEALがいかに恐ろしい存在であったかがうかがえます。
この戦争では隊員1名の戦死に対して敵兵の死者は200人以上にのぼり、その戦闘能力の高さでSEALの名を世界に広めました。
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1980年11月に発足した第6の部隊、チーム6は、対テロ戦闘を任務とする精鋭部隊で、既存のSEALチームの中から選抜された隊員で編成され、1981年には157名の隊員により、世界中のどの地域にも展開可能な態勢を整えました。
チーム6編成には、それまで対テロ専任部隊として活動していたデルタ・フォースが1980年の「駐イラン・アメリカ大使館員人質事件」で人質救出作戦に失敗した事が背景にあるといわれています。
早急な対策を迫られたアメリカ政府は、従来から高い戦闘能力を持っていたSEAL部隊に、新たに対テロ戦闘の任務を加えることにより、異例の速さで新しい強力な対テロ部隊を編成しました。
このチーム6創設の責任者には、ベトナム戦争で活躍しSEALの基礎を築いたリチャード・マルシンコ中佐が選ばれました。
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1988年には、情勢が悪化し始めていたペルシャ湾岸地域の警戒の為、第7の部隊としてチーム8が編成されました。 チーム8の活動は、不審船舶の臨検などの洋上任務に限定されていますが、その戦闘能力はチーム6に匹敵する高いレベルと言われています。 1991年に勃発した湾岸戦争において、SEALの高い戦闘能力はアメリカ軍の兵力として有効に機能し、あらゆる局面でみごとな活躍をみせました。 |
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軍隊組織であるSEALは、時代と世界情勢の変化と共に進化を続け、1987年4月、SEALは
U.S.SOCOM (合衆国統合特殊作戦郡)の元、NAVSPECWARCOM (Navy Special Warfare Command : 海軍特殊作戦軍団)
に統括されました。
現在SEALは、SBU (Special Boat Unit)
と共に、西海岸(カリフォルニア州サンディエゴ)と東海岸(バージニア州リトルクリーク)に拠点を置き、管轄地域や任務により専任チームを配備しています。
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西海岸・・・・太平洋〜西アジア地域、オセアニア、中東を管轄しています。
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東海岸・・・・西海岸の管轄以外の全地域を担当します。
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特殊部隊に関する情報は軍事機密として謎に包まれている場合が多く、SEALも設立当時から活動内容などの一切が極秘でした。
しかし湾岸戦争以降、マスコミのスクープ合戦の標的にされるなど、過剰な報道により作戦遂行に支障が出る場面も有り、最近では広報の窓口を設けてマスコミや一般向けに訓練風景を公開するなど、重要事項を除いたある程度の情報を公開するようになりました。
また、広報活動の一環としてハリウッド映画にも積極的に参加していて、映画「ザ・ロック」ではSEALが全面協力しています。
アルカトラズ島に潜入するシーンでは現役のSEAL隊員数名が撮影に参加しました。競演したショーン・コネリーはインタビューで、
「僕も昔、軍の訓練を受けた事があるから、誰が本物のSEAL隊員かは映像を見ればすぐに判るさ。プロと俳優とじゃ体の動きや銃の構え方が全然違うんだよ。」と語っています。
機会があれば、皆さんも映画で確認してみてください。
■ 隊員選抜と訓練
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SEAL隊員は、海軍兵士の中の志願者から選抜されます。志願者は、士官、水兵などのキャリアに関係なく15週間にわたる過酷な基礎訓練(BUD/S)を受けなくてはなりません。
この基礎訓練は3段階に分かれ、第一段階では体力と精神力、第二段階でスキューバ・ダイビングを中心とした潜水訓練、第三段階では特殊部隊に必要な偵察、破壊などの基礎を学びます。
更にパラシュート降下訓練を経て、訓練途中で志願者の70%以上が脱落するとゆうこれらの過酷な訓練全てを無事に終了した者が、晴れてSEAL隊員の一員となり、海軍の特殊作戦に従事する者として海軍特殊戦胸章が授けられます。
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SEALに入隊後も能力を維持する為の通常訓練が引き続き行われます。また、各隊員は資格取得コースで作戦に必要な技能資格を得る為の訓練を行います。
資格取得コースには、
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をはじめ、多数のコースがあります。
![]() ![]() DRAGER LAR-V-7 ![]() ![]() ![]() M4A1 CARBINE W/M203 GRENADE LAUNCHER ![]() ”ZODIAC” BOAT ![]() |
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装備と武器
SEALと聞いて多くの人が最初に連想するのは、潜水装備に身を包んだ隊員の姿でしょう。
彼らが用いている潜水システム、DRAGER
LAR V ( ドラッガー循環式酸素呼吸器)
は、ダイバーが吐いた息から二酸化炭素を取り除き、再び酸素を加えて循環させるもので、通常のスキューバ・ダイビングのものと違い、気泡が水面に上がらず、また、酸素ボンベも1.5リットルほどの小型のもので済みます。水深7Mで4時間の潜水が可能です。
上陸作戦では、沖から潜水した隊員は敵に発見されない様に、日が沈み周囲が暗くなるまでの間を、海岸線の海中で待機する事もあり、SEAL隊員にとって、潜水システムが小型、軽量な事は重要な要素のひとつです。
SEALでは、ウッドランドBDUとブーニーハットとゆうスタイルが一般的ですが、チーム3などの中東方面を担当する部隊は、その性格上、BDUにデザートカラーが採用されています。
デザートカラーには、6カラーと3カラー(別名:コーヒーステイン)がありますが、湾岸戦争途中から支給された3カラーが現在は主流になっています。
また、湾岸戦争投入時は、SEALの特殊作戦の一部でデザートタイガーBDU(タイガーストライプのデザート仕様)が使われ、これ以降、現在のチーム3でも採用されているようです。
![]() ![]() ![]() MP5A5 ![]() Mk23 U.S.SOCOM PISTOL |
対テロ部隊のチーム6やチーム8は、バラクラバにストロボライト付のプロテックヘルメット、そして、CWU−27Pなどのパイロット用のフライトスーツにタクティカルベストと、ロープ降下の為のラペリングハーネスを着用したスタイルが基本です。チームリーダーは、無線付のデッキクルーヘルメットを被り、各隊員に指示を出します。
HALO(高高度落下低高度開傘)では、パイロット用HGU−55/PヘルメットとMBU12/P酸素マスクを使用します。
HALOは非常に危険で過酷なため、ハイレベルのパラシュート降下技術が必要です。そのため、万一降下中に気絶した場合に、自動的にパラシュートが開く安全装置を携帯しています。
主要火器は、M4A1カービンが支給されていますが、近年では最新のナイツSR−16 M4カービンの配備が進んでいるようです。
チーム6やチーム8などの対テロ戦闘部隊では、他の多くの対テロ部隊と同様、MP5を採用しています。
SEALでは個人装備に関しては特に規定はなく、隊員各自がある程度自由に選択できるのも特徴の1つです。
ハンドガンは、Mk23SOCOM、KP9S、P226・SIG、などが使われています。また、スナイパー・ライフルは、レミントンM700をはじめ、各隊員の好みにより数種類の銃が使われているようです。
タクティカル・ベストやポーチ類は、メーカーから無償提供される場合もあるようで、あらゆるメーカーのものが使われている上、更に各自でカスタムしている場合もあり、バリエーションが無数にあります。
また、地味な存在ながらSEAL隊員の装備に、ダイバーナイフの存在は欠かせません。あるときは近接戦闘での武器として、またあるときは、水中での爆発物処理や、ロープに絡まった際の脱出時など、彼らにとって、重要な武器であり道具でもあります。
SEALに採用されるナイフは、海中とゆう金属にとって最悪の条件下での使用に耐えうるよう、チタン製のものやテフロンコーティングされたものが多く、ハンドル部にはゴムや樹脂が用いられています。
![]() "Mk V"( 特殊作戦艇) ![]() "RIB" |
興味深いのは、SEALをはじめ世界の多くの軍や部隊が日本メーカーのナイフを正式採用、または製作依頼をしている事です。
包丁の産地として世界的に有名な岐阜県関市の数社が、SEALにナイフを供給し、高い評価を受けています。
SEALが水上移動などでは、CRRC ( Combat Rubber Raiding Craft : ラバー製戦闘侵攻艇 )、
通称「ゾディアック」と呼ばれるラバーボートを使用します。
このZODIAC社製9人乗りボートに、通常6名の隊員がコンバット・フォーメーションと呼ばれる戦闘姿勢で乗船し任務に向かいます。
![]() DPV ![]() SBU(Special Boat Unit) |
その他、SBU(Special Boat Unit)所属の"Mk V"( 特殊作戦艇
: Special Operation Craft -
SEAL隊員16名とゾディアック・ボートが掲載可能で、50キャリバ−重機関銃、40mmグレネード、スティンガーミサイルを搭載) や、RIB (
Rigid-hulled Inflatable Boat - SEAL隊員8名搭乗可能で、前後に50キャリバ−重機関銃搭載)
で、SEAL部隊の海からの潜入、撤収を支援します。
空からは、飛行中隊がHH−60ヘリコプターやCH−46ヘリコプターを用いて、SEAL部隊の輸送、援護、撤収をサポートします。この飛行中隊は、対潜水艦飛行中隊や戦闘援護飛行中隊などが目的別に編成され、SEALの作戦内容により適当な中隊が出動し、SEALと共に行動します。
また、湾岸戦争ではDPV(Desert
Patrol Vehicle ) と呼ばれるバギーを使用したことが知られています。